CLIP'STYLEインタビュー

【森泉謙治】サロンの新しいスタンダードをつくる。 クリエイティブの現場と表参道のサロンを繋ぐひとすじの想い。

THE GLOBES OMOTESANDO 代表/ヘアメイク/ヘアデザイナー 森泉謙治

CLIP'STYLEインタビュー THE GLOBES 森泉謙治

見せることより、見えること。それは、その人自身が持っている本質的な美しい表現として見えることへの愛であり、見えることへの信頼であり、見えることへの尊重である…そんな作り手側に向けたコンセプトのもと2016年、表参道にオープンした『グローブス』。

代表の森泉は20代より広告クリエイティブの世界で活躍するヘアメイクのプロフェッショナルでもある。ふつうなら華やかな舞台に没入し、サロンにかけるパワーもリソースも、情熱すら薄まってもおかしくないはず。しかし森泉は言う。「サロンワークこそがライフワーク」と。

森泉さんはもともと美容の世界を目指していたわけではなかった、と伺ったのですが…

そうなんです。もともとぼくは漫画を描いたり、絵を描いたりするのが大好きだったんですね。で、美大を目指して勉強していた高三のある日、芸大卒の先輩にお会いしたことがこの道に入るきっかけ。

筆で白い紙に絵を描いても誰も喜んでくれない、しかも絵で食っていける人なんてほんの一握りなんだぞと。ただし同じ筆やペンを使って絵を描くことで目の前の女性を喜ばせる仕事がある、それがヘアメイクだとおっしゃいまして。そうか、確かに!と方向転換したんです。

その先輩と出会わなかったらいまの森泉さんもグローブスもなかったわけですね

ぼくの人生はいつも人とのつながりによって導かれてきたようなものです。キャリアの半分はファッションと広告クリエイティブの世界で積んできたわけですが、ターニングポイントで必ず大御所と呼ばれる人に拾われて、すごい偶然が重なってここまできたんですよね。もう偶然ではなくて必然と言ってもいいかな。

スタイリストとしてのデビューは美容室でしたが、某有名ファッション誌の表紙を担当するカメラマンが社長を務めるサロンで美容の楽しさを教えていただいて。

その次に18年お世話になるサロンも、同じファッション誌のヘアメイクだった金原さんのサロンに誘われたんです。金原さんは主にCM広告、ファッション、PVなどで第一線で活躍されている方で、ぼくの永遠のお師匠ですね。ヘアメイクの仕事への扉はここで大きく開かれました。

すごい人とつながれる森泉さんが、すごいです

美容師になりたい、ヘアメイクになりたいって人はいっぱいいると思うんです。ただ、その中でどこまで自分の頭の中でイメージを描けているか、ということが大切で。

ぼくでいえば原体験は高校生のときに見た渋谷の某有名ビルボードだったんですが、それをやりたい、と周囲の人たちに言葉にしていました。そこまで鮮明に、わかりやすく有言していけば必ず助けてくれる人がいる。それが最初のサロンオーナーだったり、金原さんなんですよね。

もしぼくがただ単にヘアメイクやりたいってだけだったらそういう人たちにたどり着けなかったんじゃないかな。言葉では表せないほど感謝しています。

人脈を築き、広告の世界にステージを移されるわけですが、なぜまたサロンを?

広告クリエイティブの現場ってとてもシビアな世界で。一流の人たちが顔を揃えるプロ集団なわけです。

モデルさんや女優さんといった被写体になる方はもちろん監督やカメラマン、照明やスタイリストさん、すべての方がプロフェッショナル。その中心にはクライアントがいて、大きな予算の中で動いているので、すごく緊張感あふれる空気が流れています。いまだに緊張します(笑)。

その中で出来上がったものというのは、作品としての完成度も極めて高いものになる。だから逆にそれを、その現場のものだけにするのではなく広く伝えていきたいと。

ぼくが外でやってきたことを一般のお客様、スタッフ、要するにサロンに還元することで、元気になったり豊かになるきっかけづくりになりたいんです。

幸せな人をたくさんつくっていきたいんですね

そうですそうです!突き詰めて考えるとそれがぼくの目標なんです。だからサロンワークこそがライフワーク。

お客様にとっては自分の顔や髪型って鏡で見るので平面からでしか捉えられないじゃないですか。それを、その人の目の代わりになって360度から見ることによって、その人のチャームポイントを見つけてあげる。またはウィークポイントすらチャームポイントにしてあげる。

こういうことができるんですよ、ってことを実感していただくことで、ものすごく喜んでもらえて、笑顔で帰っていただける。深々とお辞儀してサロンを後にする。こっちはお金いただいているのに、ですよ(笑)。これはもうやめられないです、正直。

サロンには若手スタッフも集まってきます

ぼくがスタッフに伝えているのは、見せることよりも見えること、っていうフレーズ。言葉だと伝わりづらいかもしれないんですが…多くのスタイリストがお客様を前にすると、まず自分の技術を見せようとするんですね。でもぼくは、その前にもっと大事なことがあると思っていて。

まず、マーケティングをする。そのお客様が何を求めているか、頭のてっぺんから足のつま先まで全て見てトータルコーディネートする発想を持ってもらいたい。お客様も十人十色でいろんなジャンルのオーダーがある。しかしそれをきちんと言葉で伝えられる方ってほぼいないんですよね。きちんと自分のスタイルを持っている方も。

それをどれだけ汲んであげられるか。それが見せることよりも見えることの真意です。

グローブスに森泉チルドレンが増えていきますね

サロン運営はもう、店長の阿部に任せていけますから、おかげさまでぼくは次の展開を考えているところです。

これは、今の時点ではまだ具体的にはお話できないんですが…ある意味、新しいサロンのスタンダードになればいいなと思っている取り組みで、お客様に圧倒的にハピネスを味わっていただけるプロジェクトです。

実は年明けから実験的にはじめていて。反響も手応えもすごく感じているところです。そのためにもスタッフにはノウハウやテクニックと同じぐらい本質的な考え方、志のようなものを浸透させていかなきゃ、と考えています。

これほんと、ぼくのいちばんやりたかったことになるので、どうか楽しみにしていてほしいですね。

表参道にサロンをオープンして約1年。森泉をはじめとするスタッフの腕の良さが口コミでひろがり、いまでは曜日時間帯問わず来店客で賑わう『グローブス』。しかしこれを成功と位置づけず、さらなる展開を仕掛けるところに厳しいクリエイティブの現場で鍛えられた森泉の戦略が垣間見られる。

言葉は優しく、物腰は柔らかく。しかしそのまなざしは鋭く美容業界の未来に向けられている。

プロフィール

森泉謙治

THE GLOBES OMOTESANDO 代表/ヘアメイク/ヘアデザイナー

千葉生まれ。得意なヘアカットやメイクの道具をあえて語ろうとしない、気取りのなさが身上。サロンと広告クリエイティブを行き来しながら培われた技術とノウハウを縦横無尽に使いこなす。かつては映画も音楽も大好きだったが、最近はもっぱら「子どもにあわせてアニメになっちゃってます」と相好を崩す。

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